「補助金があるから、何かやろう」
この発想、実はとても危険です。

補助金はあくまで「経営の目的を達成するための手段」であり、ゴールではありません。
補助金を上手に活用できる経営者と、そうでない経営者の違いは、「スタンス=考え方」にあります。
今回は、補助金を本当の意味で成果につなげる経営者のスタンスについてお話しします。


① 補助金は“後押し”であって“起点”ではない

補助金申請を検討する経営者の多くが陥りがちなのが、「補助金ありきの発想」です。
たとえば、「補助金で新しい設備が買えるらしい」「補助金がもらえるなら新事業を始めよう」といった考え方です。

しかし、これは本末転倒です。
補助金の審査では、「経営課題をどう解決するか」「今後の成長戦略にどうつながるか」が重視されます。
つまり、“やりたいこと”が先にあり、その実現を後押しするのが補助金なのです。

経営者として大切なのは、まず自社の課題や目標を明確にし、
「補助金を使えば、その実現が早く・大きく進む」と考えること。
この順番を間違えない経営者ほど、採択率も高く、成果も大きくなります。


② 「自社の強み×補助金テーマ」を見極める

現在の補助金制度は、国や自治体が「重点政策」に沿って支援内容を決めています。
たとえば、「ものづくり補助金」では生産性向上、「新事業進出補助金」では新分野展開、
「IT導入補助金」ではデジタル化・業務効率化がテーマです。

経営者が考えるべきは、「自社の強みや戦略が、どの補助金の方向性と合致するか」です。
たとえば、職人技術を持つ製造業がIoT化を進める、老舗小売店がEC販売に挑戦する――。
このように、補助金のテーマを自社の強みに“乗せていく”発想が大切です。

補助金を「制度」ではなく「戦略パートナー(手段)」として捉えると、事業計画が格段に実行しやすくなります。


③ 採択後こそ本番、「補助金経営」を意識する

採択された瞬間はゴールではなくスタートです。
補助金を受けた後には、交付申請・実績報告・経理処理など、多くの手続きが待っています。
また、補助事業として実施した投資が、どの程度売上や利益に貢献しているかを継続的に検証することも大切です。

ここで問われるのが、「補助金を経営にどう活かすか」という姿勢です。
採択された後も、成果を“数字で示す”意識を持つことで、次の補助金や金融支援につながります。
経営者自らが進捗を把握し、必要に応じて専門家にサポートを求める柔軟さが求められます。


④ 信頼できる専門家と“共創”する姿勢を持つ

補助金は、経営者の思いや戦略を「言葉と数字」で表現する作業です。
このプロセスを共に進める行政書士や認定支援機関などの専門家は、いわば“経営の翻訳者”。
これら専門家と真摯に向き合い、自社の強み・課題・ビジョンを正直に共有することが、成功の第一歩です。

最近の行政書士法改正では、行政書士の使命として「国民の権利利益の実現に資すること」が明文化され、
補助金申請などの支援業務が法的にも明確に位置づけられました。
つまり、経営者にとって信頼できる「合法かつ有資格の伴走者」を選ぶことが、これまで以上に重要になっています。


まとめ

補助金を上手に活用できる経営者の共通点は、

  • 補助金を目的化せず、経営課題の解決手段として捉えている
  • 自社の強みと政策テーマを的確に結びつけている
  • 採択後の実行・検証・提出書類の準備を怠らない
  • 専門家のサポートを受けながら戦略的に補助事業を進めている

この姿勢こそが「補助金経営」を成功に導くカギです。
補助金は、“もらうための制度”ではなく、“成長を加速させるツール”です。
スタンスが変われば、結果が変わる——。
これが、補助金を真に活かす経営者の姿です。